マルシャル監督『あるいは裏切りという名の犬』他

2012年05月08日 00:18

前回に続いてオリヴィエ・マルシャル監督作品の話になる、前回記事も併せて参照して頂ければと思う。
監督及び俳優業の前身が、警察官という異色の経歴で、その経験を活かした犯罪映画を主に撮っている監督であり、本サイトでも紹介の『ブルー・レクイエム』や、『列車に乗った男』の系列に属するフレンチ・フィルムノワールの、現在での貴重な担い手である。

『あるいは裏切りという名の犬』(原題:36 Quai des Orfevres)  2006年公開作品。
こちらにオフィシャルサイトがあり、詳細なストーリーがあるので参考にされたいが、マルシャル監督が得手とする実話をベースとしたドラマで、原題の「オルフェーヴル河岸36」はパリ警視庁の所在地。そこでの二人の警視の次期長官の座をめぐる対立を描く、前半、人間関係が解りずらい部分もあるが中盤からの展開の緻密さにラストまで引きつけられ、演出も主演の二人の演技も実に渋い傑作。
主演はダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデュー、お子様お断りの大人の男の為のハードボイルド。
劇場公開ではなくDVD発売時に観たのだが、年老いた元娼婦役の女優が、ミレーヌ・ドモンジョだと後で判ったときはチト時の流れにショックを受けた。

『やがて復讐という名の雨』(原題:MR73)  劇場未公開/2009年DVD発売。
『あるいは裏切りという名の犬』の3年後に再びダニエル・オートゥイユとのコンビで撮った作品で、こちらもマルシャル監督の刑事時代の実体験をモデルにしたストーリーとなっているらしい。
DVDが出た時に観た方の多くは、(当方を含め)前作を観ていて手にとったと思うが、前作よりはサイコ・ミステリーっぽい仕上がりになっている。

事故で娘を亡くし、妻は植物状態になってしまい、自身もアル中の刑事が、バスジャックを起こして刑事課から夜間勤務の仕事に回される冒頭から、やがて現在起きている猟奇殺人事件と過去の猟奇殺人事件が同時に語られる。
但しミステリー色は薄く、現在の事件の真犯人捜しも簡単に解決、過去の事件との関係は絡んでこないので、そこら辺りを期待すると肩すかしを喰う。

マルシャル監督は、前作同様に警察の腐敗と、それに振り回される人間の描写を、説明を押さえた俳優の演技で描き、ハリウッド映画とは対局の重厚さで進めて行くのだが、観客側は、ややもすると重い丈の印象に終わり兼ねないのが難点。
ラストも含め、切なく悲劇的な内容ながら、観ておいて損のないフレンチ・ノワール。


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