DVD 『ジュピターズ・ムーン』『聖なる鹿殺し』 鑑賞/雑感

2018年08月14日 00:25

Jupiter&sacreddee

その監督の語るところを理解しようとは思うが、どうしても宗教観の違いや、監督個人の性格や、諸々の事柄が原因で、いわゆるソリの合わない映画というのがある。今回、はからずも二作品続けて、そんな作品にブチ当たったのでまとめてしまう。…個人的な好き嫌いに過ぎないので、感銘を受けた方に異を唱えるつもりは毛頭無い事をお断りしておく。

『ジュピターズ・ムーン』(原題: Jupiter holdja)。
ハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督作品、前作は「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」。
前作の犬が一斉蜂起する瞬間からの、暴走シーンの連続は圧巻だったが、見所がそれだけと言う事では今回の作品も、面白いのは主人公の浮遊シーンのみで、他は退屈。

前作同様にSF的な設定にもかかわらず、そこら辺りを期待すると見事に裏切られる。題名の"ジュピターズ・ムーン"とは木星の衛星エウロパの事で、ヨーロッパの難民問題をも扱っている。SFチックなファンタジーと難民問題を、同じ鍋で煮詰めて失敗した作品。

『ジュピターズ・ムーン』日本語オフィシャルサイト

『聖なる鹿殺し』(原題:The Killing of a Sacred Dee)。
ギリシャの鬼才と言われるヨルゴス・ランティモス監督作品、前作は「ロブスター」で、とあるホテルに集められ、45日以内にパートナーを見つけなければ動物にすると言い渡された者たちを待ち受ける運命を追う変な作品だった。

前作も今作もキリスト教的な教義が入ってくると駄目だった。題名はギリシャの物語かららしいが、ギリシャ悲劇的な味付けも入ってくる。
バリー・コーガン演じる青年がひたすら薄気味悪くで、オカルト作品のようだが、中身は不気味な不条理劇。
…後味も悪く、観ていてつらいものがある。

『聖なる鹿殺し』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』 鑑賞/雑感

2018年08月10日 00:00

前々回の「ゴッホ 最期の手紙」でも、少々登場しているポール・ゴーギャンを描いた作品、『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』(原題:Gauguin - Voyage de Tahiti)。

ゴーギャンを演じるのはバンサン・カッセルで、エドゥアルド・デルックというお初にお目に掛かる名前の監督作品、2017年のフランス映画。
…まさか同時代の画家の映画を続けて観るとは思わなかったが、こちらは「ゴッホ 最期の手紙」と違い、きわめてオーソドックスに仕上げられた伝記映画になっている。

伝記映画と言っても、ゴーギャンがタヒチへ渡る決意をするところから、フランスへ戻るまでの話で、30代後半から話になるのだが、ここでのバンサン・カッセルはどう見ても50代に見える。
この映画で描かれた後で、ゴーギャンは再度、タヒチへ渡っているのだが、そこは描かれていない。

ここで描かれているゴーギャンの生活は、かなり悲惨で驚く。フランスでの困窮生活で妻や子どもたちと別れ、少ない資金でタヒチへ渡り、現地の女性テフラと結婚するが、彼女の不貞が発覚するわ、再び極貧生活に戻るわで、満身創痍で故郷フランスへ戻る。

当方の含めて、一般的なゴーギャンの作品とタヒチのイメージは、楽園、青い空と海、プリミティブな現地人の生活等を思い描くが、実際は、フランス領となって西欧文明が入り込んだタヒチが描かれ、全体的に重く沈鬱な印象の作品になってしまっている。

やはり、傑作を生んだ二度目のタヒチ行き以降も描いてもらえれば、と少々、残念な気がする。

『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』日本語オフィシャルサイト

日本公開予定作品『クリミナル・タウン』『若い女』『アントマン&ワスプ』

2018年08月07日 00:16

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『クリミナル・タウン』(原題:November Criminals)  8月25日(土)新宿シネマカリテ他。
「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツと「ベイビー・ドライバー」のアンセル・エルゴートが共演、原作はハヤカワ・ミステリ文庫から邦訳も出ているサム・マンソンの小説で、監督は「ヒッチコック」のサーシャ・ガバシ。
男子高校生の親友が銃殺され、事件は「チンピラの黒人少年が麻薬を巡るギャング同士の抗争に巻き込まれたもの」とされ、犯人は組織内で始末済みとして、捜査は早々に終結の様相となる。高校生は幼馴染みにして恋人未満の女性と独自に真相を解明しようとするが…。
『クリミナル・タウン』日本語オフィシャルサイト

『若い女』(原題:Jeune femme)  8月25日(土)ユーロスペース他。
フランスの若手女性監督レオノール・セライユが国立映画学校の卒業制作として書いた脚本を自ら映画化、第70回カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞した作品。
31歳のポーラは、10年付き合った写真家の恋人に突然別れを告げられる。お金も、家も、仕事も無い彼女は、恋人の飼い猫とともにパリを転々とするはめに。何をやっても裏目に出てしまい、意気消沈する中、ようやく自分の居場所を見つけたかに思えたが…。
『若い女』日本語オフィシャルサイト

『アントマン&ワスプ』(原題:Ant-Man and the Wasp)  8月31日(金)TOHOシネマズ日比谷他。
「アントマン」のシリーズ第2作目。。前作と同じペイトン・リードの監督。アントマン役のポール・ラッド、博士役のマイケル・ダグラス等、前作のメンバーに加えて、ワスプ役となるエバンジェリン・リリーと、先代ワスプ役として、ミシェル・ファイファーが新たに参加している。
アントマンとワスプ、二人の前に、すべてをすり抜ける神出鬼没の謎の美女"ゴースト"が現れ、アントマン誕生の鍵を握る研究所が狙われる。
『アントマン&ワスプ』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ゴッホ 最期の手紙』 鑑賞/雑感

2018年08月03日 00:01

昨年11月に劇場公開された作品、『ゴッホ 最期の手紙』(原題:Loving Vincent)。

ダグラス・ブース、シアーシャ・ローナン等が演じた実写映像を元に、125人の画家で構成されたチームが、印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホと同じ技法を用いてキャンバス上に約6万5000枚におよぶ油絵を描き、さらにそれをアニメーション化した、と言う飛んでもなく手の込んだ映画である。

…さらに、一般的には銃による自殺とされているゴッホの死の謎を、解き明かしていく異色のサスペンスドラマにもなっている作品。

郵便配達人の息子アルマンは、父の友人で自殺した画家のゴッホが弟テオに宛てた手紙を託される。テオに手紙を渡すためパリへと向かったアルマンは、その過程でなぜゴッホは自殺したのか、その疑問が募っていく…。

うーむ、確かに大変な労作であるし、その手間は認めるが、映画としては退屈な出来だった。短編ならまだしも、手法の面白さだけで長時間引っ張られるのはキツい。
映像的にはゴッホの風景画がユルユルと動く感じが面白いのだが、人物描写になると、どうしても実写から描き起こしてる感が見えて、没頭出来ないのだ。

人物の実写からアニメを起こす手法は昔からあり、ラルフ・バクシの「ファイヤー&アイス」及び、その他の作品で、‥最近ではアリ・フォルマン監督の「コングレス未来学会議」でも使われていたが、長編でドラマ構成にするには無理があり、難しいと言わざるを得ない。

『ゴッホ 最期の手紙』日本語オフィシャルサイト

DVD 『スリー・ビルボード』 鑑賞/雑感

2018年07月24日 00:24

『スリー・ビルボード』(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)、原題は"ミシガン州エビング以外の3つの広告板"。エビングという街の名は実在せず仮名である。

何者かに娘を殺された母親が、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。それを不快に思う警察と母親の間の諍いが、事態を予想外の方向に向かわせる。

母親役をフランシス・マクドーマンドが熱演、第90回アカデミー賞では主演女優賞を受賞し、作品はベネチアやトロントの映画祭でも脚本賞、観客賞等を受賞している。監督は「セブン・サイコパス」のマーティン・マクドナー、共演にウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェル等が出演。
ちなみにサム・ロックウェルも本作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞している。

先の読めない展開に終始する脚本の見事さに圧倒され、フランシス・マクドーマンドとサム・ロックウェルの演技に関心し、凄い映画を観たという思い出で満たされる作品だった。
ギルレモ・デル・トロのファンではあるが、アカデミー賞作品賞は「シェイプ・オブ・ウォーター」よりも、こちらに軍配を上げるべきだった。…さらに脚本賞も「ゲット・アウト」よりもこっちだろう。

多分こうなるんじゃないか、という観客の予想は、殆ど裏切られます、観客をミスリードさせる仕掛けがありながら、さらに展開を逆転させる終盤は、見事としか言いようのない幕切れで、お勧めの傑作。

『スリー・ビルボード』日本語オフィシャルサイト


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