DVD 『マザー!』 鑑賞/雑感

2018年04月13日 00:17

ダーレン・アロノフスキー、この監督の「ブラック・スワン」は結構好きな部類の映画だったので、当初、似たようなサイコミステリーだと思って、観たいなぁと思っていたら、突然、日本公開中止になったあげく、今回 Blu-ray & DVD がリリースされた作品、『マザー!』(原題:Mother!)。

主演はジェニファー・ローレンスで、共演にハビエル・バルデム、エド・ハリス、ミシェル・ファイファーがキャスティングされている。
…ある郊外の一軒家の一組の夫婦のもとに、不審な訪問者が訪れるところから物語は始まる。夫はその訪問者を拒むこともせず招き入れ、それをきっかけに、見知らぬ訪問者が次々と現れる。

まぁ、冒頭はそんな感じで始まるのだが、やがて予想外の展開になだれ込む。事前に監督自身が「この作品は聖書のメタファーだ」と言っていたのは頭の隅にあったが、次々と繰り出される、その比喩の多さに解釈している暇もなく、只、唖然。

そこいら辺りは、全て理解出来なくとも、映画はシュール且つ混沌として、サイコスリラーと割り切って観ていても面白いし、‥明らかにアロノフスキー自身がファンであるというロマン・ポランスキーの初期作品「反撥」や「ローズマリーの赤ちゃん」の影響が見て取れるのも興味深い。

日本公開を中止にしたのは、エンディングのワンシーンゆえと思え、確かに問題はあるし、絶対に万人にお勧め出来る作品ではないのだが、見応えのある異色の傑作ではある。

『マザー!』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ウエストワールド・シーズン1』 鑑賞/雑感 前回の続き

2018年03月30日 00:11

前回に続いて『ウエストワールド・シーズン1』(原題:Westworld first season)の話。

2017年のエミー賞の受賞は逃したが、その破格の制作費と共に話題になったのが豪華なスタッフとキャストで、アンソニー・ホプキンスとエド・ハリスが出演していて、製作総指揮にジョナサン・ノーランとJ・J・エイブラムスという豪華な顔ぶれで制作されている。

オリジナルの単純明快なエンタティメントと比較すると、複雑であり思索的且つ哲学的で、登場人物もそれぞれに謎が多く、単純に未来の体験型テーマパークを描いた前作とは、まるで違う壮大な作品になっている。

登場するアンドロイドは一昔前の機械仕掛け感はまるでなく、血を流し、苦しみ。喜怒哀楽さえ人間そのもので"ホスト"と呼ばれ、"ウエストワールド"を訪れる人間は"ゲスト"と呼ばれ、ここに、このテーマパークを管理する人間達が加わると、区別がつかなくなる(そこが物語の進行とも関わってくるのだが…)。

殺されたアンドロイドは回収され修理・リセットされて何度も使われるので、一部消去出来ない記憶が残ったりするが、何度も同じエピソードが繰り返されると、どうしても中だるみするので、TVドラマではなく、2時間半から3時間程度の、一本の映画にまとめて欲しかった。

一筋縄ではいかない面白さはあるが、複雑な設定に更に、このテーマパークの30年間の歴史が加わって、時間軸がシャッフルされたりするので、混沌とした印象になり、何度も見直したくなる、という希有なTVドラマであり、面白い。

なお、5月24日からシーズン2の日本配信も決定している。

『ウエストワールド』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ウエストワールド・シーズン1』 鑑賞/雑感

2018年03月27日 00:07

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2016年に制作されたアメリカのTVドラマ・シリーズ、『ウエストワールド・シーズン1』(原題:Westworld first season)が、ようやくDVDがリリースされた。
‥1973年に作家マイケル・クライトンが脚本を書き、初監督した同名のMGM映画をワーナー・ブラザースがTVドラマ化し、日本ではスター・チャンネルが放映した作品。

先ずはオリジナルの73年の「ウエストワールド」だが、なにせ40年以上前の作品なので未見の方も多いと思うが、あえて観ておけとは言わない。作られた時代が違うので今の感覚で鑑賞するとガッカリすると思う。
但し、狂ったロボット役のユル・ブリンナーがアトラクション内で観客の人間を、ひたすら追い詰める描写が当時話題になり、後にジェームズ・キャメロンが「ターミネーター」でシュワルツェネッガーに同様の、自身が壊れても追い詰めていくシーンを応用している。

原作者のマイケル・クライトンは映画「アンドロメダ…」の原作「アンドロメダ病原体」も書いていているが、「アンドロメダ…」の映画が傑作として評価されているのはロバート・ワイズ監督の力量で、クライトンは、どちらかと言うとアイデア勝負の作家で、原作も監督も請け負った作品は他に「未来警察」とかがあるが、監督向きではない。
…後に「ウエストワールド」のテーマパーク・ストーリーを発展させた「ジュラシック・パーク」の原作を出版、これをスピルバークが映画化して、ヒットさせたのはご存じの通り。

旧作の話で長くなってしまったので、『ウエストワールド・シーズン1』については次回にする、ご容赦。

DVD 『渦 官能の悪夢』 鑑賞/雑感

2017年10月07日 00:17

前回の「静かなる叫び」を観て、こちらも観たくなり探した作品、『渦 官能の悪夢』(原題:Maelstrom)。

ドゥニ・ヴィルヌーヴが2000年に監督・脚本を手がけた作品、これでヴィルヌーヴの日本公開作品は、個人的に、全作を網羅した事になる。…原題の"メイルストロム"は、大渦潮を指す英語の事らしいが、邦題の"官能の悪夢"の付加は余計。
主演はカナダの女優マリ=ジョゼ・クローズ、撮影がグザヴィエ・ドランの作品を撮っているアンドレ・ターピン。

若くしてブティックのオーナーでもある女性が、酒をあおった帰り道、一人で車を運転していて誤って男性をはねてしまう。パニックになり、そのまま走り去ってしまう。ところが、どういうわけだか事件は発覚しなかったが‥。

兎も角、奇妙な映画である、なにせ、まな板の上の料理される前の怪魚が、"時間が無い、こと切れる前に。これを話しておきたい"と言って物語が始まるのだ。何だ、これは、コメディかと思いきや、主人公の女性の堕胎シーンに変わる。
悪夢の始まりのようなオープニングに混乱しつつ、鑑賞していくと思わぬところで物語が繋がり出す。

しかし、この関連性がほとんどブラックジョーク的悪趣味要素に満ちていて、いつのまにか、この奇妙な世界に引き込まれてしまう。…地下鉄のホームとバーで出逢う怪魚そっくりの顔のおっさんとか、魚屋さん一同が故人を忍ぶシーンとか、こんなんでいいのか、と問い詰めたいけど、面白いから、まぁいいか、と許してしまえる映画です。

しかし、万人にお勧め出来る作品では絶対ない事も保証します。

『Maelstrom』英語字幕版予告編(YouTube)

『回転 ヘンリー・ジェイムズ原作』と『ザ・ダークプレイス 覗かれる女』

2017年08月15日 00:06

前回に続けてヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」の映像化二作品を取り上げる。

最初は2009年にイギリスBBCが90分のTVドラマとして製作した作品、正確な邦題は『回転 ヘンリー・ジェイムズ原作 HDマスター』というサブタイトルまでぶっ込んだ、親切なんだか、適当なんだか判らないタイトルになっている(原題:THE TURN OF THE SCREW)。…監督はティム・ファイウェル、主演はミシェル・ドックリー。

ヘンリー・ジェイムズの原作は、発表後に単なる幽霊譚ではなく、女性家庭教師の性的妄想の上に成り立っているという解釈がなされ、前回紹介のジャック・クレイトン版でも、その解釈を元に映像化されているのだが、実際の部分は映画を観た人間の想像に任せている形になっている。

このTV版は、そこを悪魔的な亡霊を登場させてしまう事により、原作の印象を小さくまとめてしまった。

次に紹介するのは『ザ・ダークプレイス 覗かれる女』(原題:In a Dark Place)。

2006年のイギリス・ルクセンブルク合作映画で日本では劇場未公開作品。…監督はドネート・ロテュンノ、主演はキューブリックの「アイズ ワイド シャット」に出ていたリーリー・ソビエスキー。

現代に移された物語になっているが、原作の何を勘違いしたのか、主役のソビエスキーが余りに肉感的で家庭教師には見えず、おまけに監督はこのソビエスキーの入浴シーンを挟んだり、他にも意味なくセクシーなショットを混ぜてみせる。
おまけに原作のメイドに当たる人間を、同性愛志向の女秘書としてキャラクター付けし、彼女のオナニーシーンまで見せている。…一体、何を考えてんだ、この監督。‥

一応、ヘンリー・ジェイムズの原作を元に現代の話にしました、それだけの映像化ではジャック・クレイトン版の出来には追いつけないので、セクシー路線にしました、…って事らしい。
おかげさまで鑑賞後、憶えているのはソビエスキーの胸の大きさだけだった。

ちなみに、1971年に製作されたマイケル・ウィナー監督、マーロン・ブランド主演の『妖精たちの森』は「ねじの回転」の前日譚で、屋敷の家庭教師と下男の倒錯した関係と、二人の逢瀬を目撃した姉弟の悲劇を描いている。


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