DVD 『ベネデッタ』 鑑賞/雑感

2023年08月08日 11:07

ポール・ヴァーホーヴェン、オランダの監督だがルトガー・ハウアーとのコンビで何本か作品を撮っていて、その後ハリウッドに渡り「ロボコップ」「トータル・リコール」「氷の微笑 」「スターシップ・トゥルーパーズ」等のヒット作を次々と撮って、一躍、注目の監督となったが、「ショーガール」や「インビジブル」が批評家から低い評価を受け、興行的な失敗もあって、オランダに戻った(以上、2017年4月に掲載した記事から引用)。

そのヴァーホーヴェンの昨年公開された新作が『ベネデッタ』(原題:Benedetta)。
17世紀に実在したと言われる修道女の裁判記録を元に、如何にもこの監督らしい過激でエロチックな作品に仕上げてきた。

ヴァーホーヴェンが -『ベネデッタ』は「氷の微笑」「ショーガール」「ブラックブック」「エル ELLE」のヒロインたちの親戚というわけさ- と言うように、まさにヴァーホーヴェン好みの、強くエロチックな女性達と、どうしようもなくだらしない男達の物語である。

ボカシ無しの全裸シーンをはじめグロさもありながら(R18指定)、これだけ見応えあるエンタティメント作品を撮って見せるヴァーホーヴェンは、やはり凄かった。

修道院長を演じているシャーロット・ランプリングが如何にもな役で出ていて、終盤、彼女がペスト(黒死病)にかかり。みずから火刑場の火の中に身を投じるシーンが圧巻。

『ベネデッタ』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ハッチング-孵化-』 鑑賞/雑感

2023年05月21日 21:58

フィランランドの新鋭女流監督ハンナ・ベルイホルムの長編デビューで、サイコ・スリラー的ホラー作品、『ハッチング-孵化-』(原題:Pahanhautoja)。

フィンランドの片田舎で家族と暮らす12歳の少女が主人公で、彼女が森で奇妙な卵を見つけた事から起こる、一見幸せそうな家族の崩壊を描く。2022年のサンダンス映画祭で上映され、その後、ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でもグランプリを受賞している。

少女が見つけた卵を自分のベッドで温めると、卵自体が大きくなるという、あり得ない設定で、やがて孵化して何が生まれて来るのか、というSFチックな興味をそそられ面白い。これは前々回紹介の「LAMB ラム」と似ている。

但し「LAMB ラム」と違い、おぞましいヤツが生まれて来て、かなりグロいので、そこら辺りに耐性がない御仁には勧めない。このクリーチャーの造形を担当しているのが「スター・ウォーズ」や「プロメテウス」等のアニマトロニクス・デザイナーであるグスタフ・ホーゲンで、CGで処理されたクリーチャーとの違いを堪能できる。

少女が新体操の大会に出場する為に母親から追い込まれ、抑圧された感情を抱えたままの不穏さと、黒い鳥との隠喩が、ダーレン・アロノフスキーが監督し、ナタリー・ポートマンが主演した「ブラックスワン 」にも似ていたりする。

それにしても日本版のポスターは無意味で酷い。

グスタフ・ホーゲン『Animatronics showreel 2012』YouTubeサイト

『ハッチング-孵化-』日本語オフィシャルサイト

VOD 『ザリガニの鳴くところ』 鑑賞/雑感

2023年02月18日 21:26

全世界でベストセラーとなり、早川書房から邦訳も出て、「本屋大賞」の翻訳小説部門で1位のディーリア・オーウェンズの変わったタイトルの作品の映画化。
『ザリガニの鳴くところ』(原題:Where the Crawdads Sing)。

昨年秋に日本公開があって、早いペースでプレミア配信が開始され、原作を読んでから観たかったが、結局読まずに映画を先に観賞。

ノースカロライナ州の湿地帯で、金持ちの青年が変死体となって発見されるところから物語が始まる、湿地帯で育った少女カイアが犯人として疑われた。彼女は6歳の時に家族に捨てられて以来、学校へも通わずに湿地の自然から生きる術を学び、たった1人で生き抜いてきていた。彼女にかかった殺人容疑の真実は…

ミステリーではあるが、彼女の世界に迷い込んだ一人の少年がいた事から、成人した二人のラブロマンスの描きに主流が置かれ、さらに後半は彼女の裁判がメインの法廷物として話が進行する。
一人の女性が湿地で生きていくための本能が、その湿地での生物から学んで来たという展開が、最終の説明になる、

まぁ、成る程とは思うし、真犯人探しの面白さを維持したまま、最終章まで進むので面白い事は面白いのだが、色々と設定に無理があるので、そこら辺りに目を瞑らなければならないのが欠点ではある。

『ザリガニの鳴くところ』日本語オフィシャルサイト

VOD 『LAMB ラム』 鑑賞/雑感

2023年01月17日 17:40

鑑賞中、一体何を見せられているのか、何処へ行きつく話なのか?…と思いながら観ていた。『LAMB ラム』(原題:Lamb)。

この監督「ローグ・ワン」等の特殊効果を担当していて長編監督デビュー作とのことだが、悪く無い出來の第一作である。

説明では"アイスランドの田舎で暮らす羊飼いの夫婦が、羊から産まれた羊ではない何かを育て、やがて破滅へと導かれていく様を描いたスリラー"とある。

ホラー系のようで、SF作品のようでもあるが、主人公のノオミ・ラパスの名がマリアで、宗教画を思わせるポスターで、作品全体の雰囲気から、何やらキリスト教がらみの寓話っぽくもある。

で、理解するのに宗教観が重要かというと、そんな事は無く楽しめる。
"羊から産まれた羊ではない何か"という説明から、ヴィンチェンゾ・ナタリの「スプライス」のような一見おぞましいモノが産まれて来るかと思っていたら、これが意外と可愛いので、グロさ等は無く、そこら辺りが苦手な方でも観賞可能。

その産まれてきた何かの見せ方が、順を追って丁寧というか、計算ずくの演出で面白いのだが、…但しラストに至って、話が一挙にぶっ飛ぶ映像が出てくるのだが、これが凄い。

『LAMB ラム』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ブレット・トレイン』 鑑賞/雑感

2023年01月17日 17:26

暫く間が空いてしまったが、なのに取り上げたのがB級アクション作品?、いいや、これはコメディ・アクション、というよりはギャグ・アクション映画だった。
『ブレット・トレイン』(原題:Bullet Train)。

原作が伊坂幸太郎の「マリアビートル」で、監督がスタントマンから監督になり「アトミック・ブロンド」「デッドプール2」「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」を撮ったデビッド・リーチで、主演がブラッド・ピットである。

東京発、京都行きの新幹線の車内が主な舞台だが、新幹線ではなく超高速列車『ゆかり』という事になっている、なにせ京都行きなのに大宮を通るという「エッ?東北新幹線?」な出だしから出発早々、秋葉原を通過するという無茶苦茶な設定で始まる。

ぶっ飛び過んでいるのはそれだけに非ず、登場人物が死んだと思ったら実は生きていましたな「魁 男塾」的展開。冒頭、列車には一般の乗客が居るのに中盤から誰一人他の乗客が乗ってこないと思ったら、ラスボスの「この列車のチケットは全て買い占めた」の一言。そして合間に入る音楽が「スティン・ア・ライブ」や「500マイル」と来て「上を向いて歩こう」とキューブリックも逃げだす選曲が続く。

明らかにタランティーノの影響を隠しもしない演出の合間にそうしたお遊びが挟まり、
この突っ込みどころ満載なトンデモ展開が、刺さるか刺さらないで、この映画の評価は天と地ほど違ってくる。…いやぁ私は、最初から、最後の京都市内に新幹線が折り重なって事故ってるシーンまで笑い転げて観賞しましたが...。

登場人物の俳優陣がゲスト出演かよな配置で豪華、でも一番印象に残っているのはなんとか言う毒蛇だったりする。

『ブレット・トレイン』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ニトラム/NITRAM』 鑑賞/雑感

2022年09月08日 15:16

1996年にオーストラリアで起こった無差別銃乱射事件の映画化作品、『ニトラム/NITRAM』(原題:Nitram)。

題名のニトラムとは主人公の名前マーチンを逆さ読みにした蔑称なんだが、映画の中では一切説明が無く、作品の紹介文等にあるのみ。、
かってスティーブン・キングが「シャイニング」とその続編「ドクター・スリープ」で「MURDER」を「レッドラム(REDRUM)」として作中で使ったいたのを思い起こす。

主人公のケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、デヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン・クローネンバーグの「アンチヴァイラル」に初主演していた俳優でエキセントリックな役どころが多く、本作品ではカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞、その他の映画祭でも主演男優賞をいくつか受賞している。

この周囲から孤立し、全てが思い道りに行かず、精神に変調を来す事となる一人の男の精神の遍歴をジャスティン・カーゼル監督は丁寧に追いかけるが、負傷者含め死者50名という本作の最後となる無差別銃乱射事件についてはその描写を避け、現実の銃社会が変化していく状況を報告するだけにとどめていて、監督の巧さが際立った。

27歳の主人公を理解し、援助する50歳の女性ヘレンを演じたエッシー・デイヴィスの演技が印象に残る作品でもあった。

『ニトラム/NITRAM』日本語オフィシャルサイト

DVD 『シャドウ・イン・クラウド』 鑑賞/雑感

2022年08月23日 19:28

クロエ・グレース・モレッツが主演し、グレムリンと戦うという触れ込みの映画だったので鑑賞したのだが…。
『シャドウ・イン・クラウド』(原題:Shadow in the Cloud)。

グレムリンというのは、元来機械に悪戯をする妖精の呼称で、ジョー・ダンテが実写化した作品が知られているが、航空機に取り付き破壊行動を行う悪鬼としての存在もある。

リチャード・マシスンが原作の「二万フィートの戦慄」が、『ミステリー・ゾーン』で映像化され、さらにそれを1973年に「トワイライトゾーン/超次元の体験」の中でジョージ・ミラーが監督し、ジョン・リスゴー主演で再映像化されている。

しかし本作に登場するグレムリンは猿と蝙蝠を合体させ凶暴に設定しただけの何の面白みも無いクリーチャーに過ぎなかった。
第2次世界大戦中の物語という事で、敵はグレムリンのみならず日本軍の零戦も登場する、但しそれを作り込むCGの予算も足りなかったのか遠方の機影のみである。
これらが穴だらけのシナリオ上で展開するというナンチャッテとんでもB級映画だった。

それでも、クロエ・グレース・モレッツのファンなら我慢して鑑賞できるかもしれない、彼女が爆撃機の銃座室に閉じ込められてから、スピーカーから聞こえる男性乗組員と彼女の会話のみで物語が進行し、それも殆どクロエのアップに終始してのシーンばかりで、映画の2/3を占めているのだから‥‥。

『シャドウ・イン・クラウド』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ベルファスト』 鑑賞/雑感

2022年08月03日 18:50

種々の大した事無い事情により、更新が滞ってしまいました、暫くぶりの投稿です。

俳優としてのケネス・ブラナーは数々の作品に出ていて、監督作品も結構多い。初めて監督としての名が記憶に残ったのは「スルース」だったが、余り良い評価はされなかったのを覚えている。その後も大した作品を撮っていなかったが、ここへきて佳い作品を撮り上げた。『ベルファスト』(原題:Belfast)。

自身の少年時代を投影した自伝的作品になっていて、北アイルランドのベルファストが舞台になっている。前後の現在の映像以外の殆どがモノクロの映像で撮られている。
プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始めた激動の時代の中で、少年時代に彼が触れた映画や音楽が数多く取り上げられていて興味深い。モノクロ画面の中で「チキチキバンバン」や「恐竜100万年」の登場部分がカラーだったりする。

オマケに彼自身が監督した作品の「マイティ・ソー」やアガサ・クリスティの話しもちょこっと出てくるし、「恐竜100万年」のラクエル・ウェルチが登場するシーンでは一緒に観賞した母親が父親に「これが目当てだったの?」と訊くシーンさえ挟まれていて笑える。
他にも「リバティーバランスを射った男」や「真昼の決闘」も登場し、旧映画ファンは
お勧めの作品になっている。特に「真昼の決闘」ではグレース・ケリーのアップシーンが使われている念の入れよう。

本編の登場人物では、祖母を演じるジュディ・デンチが、007シリーズでのM役や「ジョーンの秘密」でのスパイ役とは、まるで違う役を好演していてなかなか良い。

『ベルファスト』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ハウス・オブ・グッチ』 鑑賞/雑感

2022年05月27日 10:39

老いて尚、未だに面白い映画を撮り続けている巨匠リドリー・スコットの監督作品、しかも出演陣が凄い、レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジャレッド・レトと癖せの強い役者揃い、『ハウス・オブ・グッチ』(原題:House of Gucci)。

まぁ、当方は一切興味の無いファッションブランド"グッチ"の創業者と、その一族の物語である。といってもさすがリドリー・スコット、これが面白い、サラ・ゲイ フォーデン他の著者による同名の原作本(和訳は単行本は講談社から、文庫版はハヤカワから上下巻が出ている)を元に、彼が作り上げた物語はエンターテイメントに徹していて、2時間半の長尺にも関わらず飽きさせない。

アル・パチーノが出ている事もあり、イタリアが舞台の英語劇なので、「ゴッドファーザー」を彷彿とさせる作品に仕上がってもいるし、一族の興亡の物語なので「地獄に落ちた勇者ども」をも想起させる。

しかし、アル・パチーノもジェレミー・アイアンズも老けたなぁ。レディー・ガガ、アダム・ドライバーについては兎も角、ジャレッド・レトが最初、彼だと判らなかった、さすがのカメレオン俳優ぶりに唖然とした。

リドリー・スコット御年84歳、前作が「最後の決闘裁判」で、次回作はホアキン・フェニックスを主演に据えた「ナポレオン」だ。
製作・総指揮のSF大作「レイズド・バイ・ウルブス」もU-NEXTで公開中。

『ハウス・オブ・グッチ』日本語オフィシャルサイト

DVD 『アンテベラム』 鑑賞/雑感

2022年05月11日 19:45

「ゲット・アウト」「アス」のプロデューサー、ショーン・マッキトリックが、その二作の監督に代わり、ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツという二人の新人を起用して製作した異色スリラー作品、
『アンテベラム』(原題:Antebellum)。

主演が「ムーンライト」「ドリーム」のジャネール・モネイで、エデンとヴェロニカ役に当てられている。
物語は先ず、奴隷制度を信奉する南軍の旗が掲げられたアメリカ南部の綿花畑から始まる、ここに奴隷として捕らわれてきたエデンが過酷な労働の屈辱に耐え、仲間と脱走計画を実行するところまでが映画に約半分弱で語られる。

この後、奴隷制度の悪夢から、物語は一転、現代のアメリカで、人気作家であり、博士号を持つ社会学者としてのヴェロニカ側に話が移る、
講演会のためにニューオーリンズを訪れた彼女は、現地で合流した親友らと高級レストランでのディナーに趣く、しかしその行く手には恐ろしい罠が待ち受けていた。

ここで物語は再度、南軍のプランテーションである綿花畑のエデンの話に戻るのだが、観客はここでヴェロニカとエデンの関係性、繋がりを推理する事になる。
ふたつの物語をどう交差させるのかで、後半への興味を持たせる趣向である…。

但し、宣伝で謳う"あらゆる思考が吹っ飛ぶ衝撃の真実"に至る前に、当方は、これはM・ナイト・シャマランのあの作品の結末と同じではないかと、思ってしまい、残念ながら、そのとうりだった。
やはり、このプロデューサーの作品はシャマランの作品と似ている。

『アンテベラム』日本語オフィシャルサイト


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