ハードボイルド&ミステリー名作映画化作品-3 『幻の女』

2017年06月24日 08:28

前回からの順番で行くと次ぎは「ロング・グッドバイ」だと思った貴方、それは2年前に書いているんで割愛。今回はコーネル・ウールリッチがウィリアム・アイリッシュ名義で書いた『幻の女』(原題:Phantom Lady)を取り上げる。
海外ミステリ・ベストで必ず上位に入る、この原作、知らない人は居ないと思うが、一応ストーリーをかいつまむと‥。

妻と喧嘩し、あてもなく街をさまよっていた男は、風変りな帽子をかぶった見ず知らずの女に出会う。彼は気晴らしにその女を誘って食事をし、劇場でショーを観て、酒を飲んで別れた。その後、帰宅した男を待っていたのは、絞殺された妻の死体と刑事たちだった。
刑事が、彼のアリバイを証明してくれるはずの女を探すが、バーテンダー、タクシー運転手、レストランのボーイ、劇場関係者に聞きこみを行うが、全員が男に連れはなく1人だったと証言。

日本のTVでも過去に何度かドラマ化されているが、映画は1944年のロバート・シオドマク監督版のみ。

モノクロームで、冒頭のユニバーサル・ピクチャーのロゴタイトルは旧スタイル、時間は83分という、今の映画からみると如何にもの古さだが、DVDで観る事が出来る(ちなみにブルーレイは出ていない)。

しかし、結論から言うと、この映画は原作の面白さを活かしていない。原作は主人公の死刑執行が近づくタイム・リミットと、最後まで犯人が解らず、どんでん返しに至る過程の面白さが魅力なのだが、こちらは途中で真犯人をあかしてしまう。

…連れの女が居たはずなのに、貴方は一人だった、という証言が、重なる謎のミステリーは、その後の推理小説で同工異曲の作品が多出したが、原典のアイリッシュ作品の面白さに及ぶ物は、未だに出ていない。

原作を未読の方は、この映画を先に観てはいけません、原作から先に読みましょう。

ハードボイルド&ミステリー名作映画化作品-2 『大いなる眠り』

2017年06月22日 00:05

前回と同じくチャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズ、『大いなる眠り』(原題:The Big Sleep)。…これ「さらば愛しき女よ」と同日に復刻シネマライブラリーがDVDをリリースしてくれた作品。
「さらば愛しき女よ」の後で監督がマイケル・ウィナーに変わって撮られているが、マーロウ役は ロバート・ミッチャムが続投。

原作は創元文庫から双葉十三郎の邦訳で出ていたが、2012年に村上春樹の訳でハヤカワからも出ている。映画化はハワード・ホークスがハンフリー・ボガートを主演に「三つ数えろ」 の邦題で公開され、この作品は二度目の映画化となる。

これは原作も、この映画も当方は初見。…劇場未公開で、観たいと思った時にはDVDが出ておらず、VHSしかなかったが、既にVHS機器は処分した後。

鑑賞にあたり「さらば愛しき女よ」の出来がいいので、こちらは二番煎じなんじゃないのか、と危惧しながら再生。
まず、舞台がイギリスに設定されているのが、何だかなぁと思えるし、スーツ姿が決まっていて、前作のチョッとうらぶれた感がないのも気になる。
原作の物語はスト-リーが込み入っていて、それをかなり忠実に映画化しているらしいが、兎も角、人間関係が複雑で判り難い。

まぁ不満はあるが、ミッチャムのマーロウを再び観れただけでも満足。そして何より懐かしのスター達が大挙して出ている。ジェームズ・スチュワート、ジョン・ミルズ、サラ・マイルズ、オリバー・リード、エドワード・フォックス等。…それだけでも観る価値は充分にある。

ハードボイルド&ミステリー名作映画化作品-1『さらば愛しき女よ』

2017年06月20日 00:41

今週は過去のハードボイルド&ミステリーの名作の映画化作品を取り上げる。3点とも書籍と映画は同題名の作品。先ずはレイモンド・チャンドラーの『さらば愛しき女よ』(原題:Farewell My Lovely)。私立探偵フィリップ・マーロウが主人公のシリーズである。

これは原作も映画も大好きなので、過去にこちらで取り上げている。この記事を書いたのが5年前で、この時点でDVDが発売されていないと書いたが、今年3月に復刻シネマライブラリーが遂にDVDを発売してくれたのである(…嬉しい)。

…で、再見した感想は、どうしても以前の記事とダブるので、ご容赦願いたい。
監督はディック・リチャーズ、フィリップ・マーロウ役がロバート・ミッチャム、魔性の女役がシャーロット・ランプリングというイメージを裏切らないキャスティングが素晴らしい。

確か今年、70歳を超えたはずのシャーロット・ランプリング、この時は30歳になったか、ならないかという年齢で、まさに男を破滅させる運命の女"ファム・ファタール"感を妖艶に演じてみせている。

久し振りに再見したが、何とも気怠く物憂いメロディが流れるオープニング、1940年代のロスのネオンサインと夜景、咥え煙草で、それを見下ろすフィリップ・マーロウのモノローグ、これだよ、この雰囲気、たまりません、これぞハードボイルド。
決してレイモンド・チャンドラーの原作を忠実に映画化している訳ではないが、映像は見事にチャンドラーになっている作品、再見して良かったなぁ。

オン・デマンド 『高い城の男』 鑑賞/雑感

2017年06月17日 00:03

フィリップ・K・ディック原作の長編大作、初の映像化である、『高い城の男』シーズン1(原題:The Man in the High Castle)。製作総指揮リドリー・スコットによるTVドラマシリーズで、米国では昨年秋から配信され、現在はシーズン2まで放映済みだが、日本では Amazonプライムが配信中。

原作はヒューゴー賞を受賞し、日本ではハヤカワから邦訳が出ている作品で、第二次世界大戦でナチス・ドイツと日本が勝利し、アメリカが東西に分断されている世界が舞台の"歴史改変SF"で、発表されたのは55年前である。当方は初期の川口正吉ではなく浅倉久志訳版を30年ほど前に読んではいるが、もはやウロ憶えで部分的にしか憶えていない。

映像化のニュースが入った時は、これは観るぞ、と思ったが、まさか、嫌いなTVドラマシリーズだと知って、どうでも良くなった、…日本での配信もDVD販売も当面なさそうだし。…まぁ、しかし Amazonが配信し、第1話を無料配信してるのを知り、とりあえず、導入部の雰囲気だけでも、と鑑賞。

という訳で、第1話だけ観て感想書くな、と言われるのを承知で書いているので、そこは突っ込まないで頂きたいが、左の映像が出てきた時は不謹慎にも笑ってしまった。

まぁ、日本とドイツにより東西に分断されたアメリカのイメージの映像は興味深く見れたが、それほど深く作り込まれてはいないし、何より人間ドラマの部分が薄く、続けて鑑賞しようという気は起きない。

「高い城の男」なる謎の人物によって執筆され、日本とドイツが敗戦国だった、という"架空"の小説が、ここでは映画フイルムになっているのだが、これではナチが禁書にし、保安警察が取り締まると言う「華氏451度」を思わせる設定が生きてこない。

…それと、せめて日本人同士の日常の会話は日本語にして、テロップで英語入れろや、と思うのは私だけではないと思うが‥。

『高い城の男』amazonプライム配信サイト

日本公開予定作品 『ハートストーン』『パワーレンジャー』『甘き人生』

2017年06月15日 00:01

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『ハートストーン』(原題:Hjartasteinn) 7月15日(土)恵比寿ガーデンシネマ他。
アイスランドの映画、初長編を手がけ各国映画祭で絶賛されたグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督作品。第73回ヴェネチア国際映画祭最優秀LGBT映画賞ほか40以上の賞を受賞している。
思春期をむかえた少年少女たちの繊細な感情を描く青春映画。東アイスランドの漁村。幼なじみのソールとクリスティアンは思春期にさしかかり、ソールは大人びた美少女ベータに興味を抱き始める。
『ハートストーン』日本語オフィシャルサイト

『パワーレンジャー』(原題:Power Rangers) 7月15日(土)丸の内TOEI他。
日本の「スーパー戦隊シリーズ」を元にアメリカでTVドラマ化されていた作品を、最新の映像技術を用いてハリウッドがリブート、映画化したアクション大作。監督は「プロジェクト・アルマナック」(劇場未公開/DVD発売有)を撮った新鋭ディーン・イズラライト。5人のレンジャー役は全てTVシリーズからキャストを一新している。
5人の若者が偶然にも同じ時間・場所で不思議なコインを手にしたことで、超人的なパワーを与えられて…。
『パワーレンジャー』日本語オフィシャルサイト

『甘き人生』(原題:Fai bei sogn) 7月15日(土)有楽町スバル座他。
イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督の最新作、イタリアの人気俳優ヴァレリオ・マスタンドレアとベレニス・ベジョが共演する人間ドラマで、イタリア人ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによるベストセラー自伝小説の映画化作品。…戦後イタリアの光と影を背景に、二つの都市と二つの時間が交錯する中で綴られる愛の物語。
1969年、9歳の少年の前から、ある日突然、母親がいなくなる、喪失感にさいなまれたまま時を経て1990年代、彼は愛を与えてくれる女医と出会う。
『甘き人生』日本語オフィシャルサイト

Artist Pickup クリスチャン・ジョンソン

2017年06月13日 00:04

クリスチャン・ジョンソン(Christian Johnson)英国生まれのキャラクターアーティスト、アニメーター、 ディレクターだが、実は一度、2014年に"NET上で鑑賞出来るSF系ショート作品 No.2"の記事中で紹介しているのだが、この時は「Great martian war」(大火星戦争)のみだったので、改めてアーティストとして再紹介。

greatmartianwar3

2013年にヒストリーチャンネルで放映された3分30秒のアニメーション作品「Great martian war」で、注目され、現在、Plazma Designなる自身の組織でアニメーションディレクターとして作品を発表。2015年からは、Nexus productionsでキャラクターアーティストとしての仕事にも携わり、他にも世界中の多くの異なる制作会社で作品を発表している。

christianjohnson

Plazma Design。    ◎ArtStation - Christian Johnson
Pinterest Plazma Page。    ◎PLAZMA SHOWREEL 2017

DVD 『ドクター・ストレンジ』 鑑賞/雑感

2017年06月10日 00:01

正直な話、最近、アメコミ映画には食傷気味だったんだが、まさか昔からチョコチョコ目を通していて、この原作が映画化されるのは難しいだろうと思っていた作品、『ドクター・ストレンジ』(原題:Doctor Strange)を鑑賞。

主演がベネディクト・カンバーバッチというのも以外で、へぇ~、マッツ・ミケルセンも出てるんだ、となれば、これは観ねばなるまいよ。
監督はスコット・デリクソン、「NY心霊捜査官」「フッテージ」等、ホラー系作品の多い監督で、他の共演はティルダ・スウィントン、レイチェル・マクアダムス等。
Dr.ストレンジはマーベルコミックのヒーローとしては異色で、天才脳外科医の過去を持ちながら、修行で魔術を会得し、超能力に加え魔法を操る。

…で、映画のイメージは「インセプション」+「ハリー・ポッター」+「ドラゴンボール」という雰囲気で、どれも好きなら絶対お勧め。「インセプション」の視覚効果を盛りに盛った物凄い映像体験は、中盤でエッシャーの世界に突入し、万華鏡の筒の中に放り込まれたような酩酊感を味あわせてくれる。

原作では ドクター・ストレンジの師匠エンシェント・ワンは、500歳を超えたチベット人の男性なのだが、これをティルダ・スウィントンが演じているが、彼女が「コンスタンティン」で演じた大天使ガブリエルに匹敵する存在感を感じさせるキャスティングだった。

…尚、これからご覧になる方は、エンドクレジット後の予告映像が二段構えになっているので、ご注意あれ。

『ドクター・ストレンジ』日本語オフィシャルサイト

DVD 『われらが背きし者』 鑑賞/雑感

2017年06月08日 00:00

珍しくハヤカワではなく、岩波現代文庫から上下巻で邦訳が出ているジョン・ル・カレの同名スパイ小説の映画化、『われらが背きし者』(原題:Our Kind of Traito)。まぁ、最近はハヤカワ一辺倒ではなく集英社や光文社辺りからも邦訳がでているが、作品発表順としては、これも映画化もされた「誰よりも狙われた男」の次に発表された作品。

監督はイギリスの女流プロデューサーで監督作はTVMが殆どのスザンナ・ホワイト。主演はユアン・マクレガー、他のキャストはステラン・スカルスガルド、ナオミ・ハリス、ダミアン・ルイス等。

イギリス人大学教授の主人公が、夫妻でモロッコでバカンス中に知り合ったロシアンマフィアに、USBメモリをMI6に渡してほしいと依頼され、困惑はするが、彼に迫った危険を知り、引き受けてしまう。それを機に夫妻は世界を股に掛けた危険な亡命劇に巻き込まれる事になる。

大人のサスペンスという雰囲気に終始する作品で、派手なアクションシーンや予想を裏切るような展開もない、ジョン・ル・カレ原作だが、スパイ物と言うよりは、地味な巻き込まれ型の物語。ハリウッド調のスパイ映画を期待して観ると退屈するかも知れない。

敵・味方がはっきりしないと嫌だ、という人には不向きな映画だが、出ている役者が好きだったら、観ておくべきで、主演のユアン・マクレガーも、MI6のダミアン・ルイスも良い味を出している。特にロシア・マフィア役のステラン・スカルスガルドにはやられました、この人、色々な作品にいつも変わった役で出ているけど、こんないい役者だったとは…。

『われらが背きし者』予告編(Youtube)、日本語オフィシャルサイト無し。

日本公開『ディストピア パンドラの少女』『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』『ジョン・ウィック チャプター2』

2017年06月06日 00:07

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『ディストピア パンドラの少女』(原題:The Girl with All the Gifts)  7月1日(土)新宿バルト9他。
東京創元社から邦訳も出ている、M・R・ケアリーの小説「パンドラの少女」を著者自身による脚本で実写映画化した作品。監督コーム・マッカーシー、主演セニア・ナニュア、どちらも新人をキャスティング。
ウィルスによって人類のほとんどが凶暴化し、人間としての精神を失い、捕食本能に支配された世界で発見された、特別な知能を持つ少女メラニー。この奇跡の少女は世界の救世主なのか
『ディストピア パンドラの少女』日本語オフィシャルサイト

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』(原題:Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales)  7月1日(土)全国公開。
ジョニー・デップ主演のヒットシリーズの第5弾。…海の死神サラザールは古くからの敵ジャック・スパロウへの復讐を望んでいた。サラザールは悪魔の海賊の乗組員と共に悪魔の三角形域から脱出し、海賊全員を絶滅させることを決める。
共演はオーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ジェフリー・ラッシュ等おなじみの面々に加えて、海の死神役をハビエル・バルデムが演じる。
『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』日本語オフィシャルサイト

『ジョン・ウィック チャプター2』(原題:John Wick: Chapter 2)  7月7日(金)TOHOシネマズ日本橋他。
キアヌ・リーブスが伝説の元殺し屋に扮した「ジョン・ウィック」のシリーズ第2弾。監督は前作と同じチャド・スタエルスキ。前作からのキャストに加え、ローレンス・フィッシュバーンも参加。
…ジョンのもとにイタリアン・マフィアが殺しの依頼にやってくる。しかし平穏な隠居生活を望むジョンはマフィアの依頼を一蹴した為、怒りを買い、想い出の詰まった家をバズーカで破壊されてしまう。
なお、本シリーズは3部作になる事があらかじめ予告されている。
『ジョン・ウィック チャプター2』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ヒッチコック/トリュフォー』 鑑賞/雑感

2017年06月03日 00:10

2015年に製作され。昨年2016年に日本でも劇場公開され、今月、DVDが発売になったドキュメンタリー、『ヒッチコック/トリュフォー』(原題:Hitchcock/Truffaut)。

晶文社から邦訳も出ている書籍「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」を元にしている。
本サイトで6年前に紹介している「アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ」と並んで、ヒッチファンなら読んでおくべき定番本。

フランソワ・トリュフォーがアルフレッド・ヒッチコックにインタビューした際の音声データをベースに、現在の映画監督達へのインタビューも加えて、「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」のケント・ジョーンズが監督している。

出てくる監督達が素晴らしく、マーティン・スコセッシ、デヴィッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、リチャード・リンクレイター等の、ヒッチコックを尊敬する監督たちの登場もうれしい。

「鳥」の俯瞰シーンをスコセッシが黙示録的イメージと言い、リチャード・リンクレーターが神の視点からとらえられたかのようだと説明するシーンがいい。

新旧、数々の名シーンも続々と紹介され、ヒッチもトリュフォーも、その作品が大好きな当方にとっては、あっという間の80分の至福体験ドキュメンタリーであった。

『ヒッチコック/トリュフォー』日本語オフィシャルサイト


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