DVD 『ゲティ家の身代金』 鑑賞/雑感

2018年10月19日 08:21

実際の事件を元にリドリー・スコットが映画化したサスペンスドラマ、『ゲティ家の身代金』(原題:All the Money in the World)。

1973年、石油王ジャン・ポール・ゲティの17歳の孫がローマで誘拐され、母親に1700万ドルの身代金を要求する電話がかかってくる、離婚でゲティ家を離れていた母に支払いは不可能。しかし身代金を要求された石油王ゲティは支払いを断固拒否する。

母親役をミシェル・ウィリアムズ、元CIAの交渉人役をマーク・ウォールバーグが演じているが、ゲティ役として当初にキャスティングされていたケビン・スペイシーが完成間近にスキャンダルで降板、クリストファー・プラマーが代役を務めて再撮影に入り完成された曰く付きの作品でもある。

個人的には「手紙は憶えている」でのクリストファー・プラマーが良かったので、これは嬉しい。かって「サウンド・オブ・ミュージック」で7人の子供たちの父親の大佐を演じていた彼も今や90歳に近く、実に味のある老齢の役者になり、個人的には、ケビン・スペイシーより、彼に代わって良かったと思っている。

作品自体は、完成間近に撮り直したとは微塵も感じさせない、さすがリドリー・スコットの職人芸で最後まで引っ張られるが、題材から来るミステリー色やサスペンス感は薄いので、そこらあたりは期待しない方がいい。

孫の身代金を出し渋る割には、芸術品には金額を出し惜しまないゲティ翁が最後に、1枚の絵画に描かれた聖母マリアが抱く幼児のキリストを眺めながら息を引き取るシーンは、「市民ケーン」のラストを思い起こさせる終わり方になっていた。

『ゲティ家の身代金』日本語オフィシャルサイト

DVD 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 鑑賞/雑感

2018年10月16日 08:23

正直、最初はどんな視点で撮っているのか解らず、面食らった。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(原題:The Florida Project)。

このショーン・ベイカー監督って、全編iPhoneで撮影した映画「タンジェリン」で高く評価されたらしいが、残念ながら観ていないので、初の鑑賞作品になる。
最初の印象は、撮り方が、何かウェス・アンダーソンっぽいなと感じたのだが、見終わると、実に温かい人間ドラマを撮る監督なんだと判った。

フロリダのディズニーワールドのすぐのモーテルで、その日暮らしの生活を送っている人間達を描き。そこの子供達の視点で映画は進行する。その環境が妙にカラフルでファンタジーを見せられているのかと勘違いしそうになるが、物語は貧困層の人々の日常を丁寧に追っている。

ウィレム・デフォーがモーテルの管理人を淡々と演じ、第90回アカデミー助演男優賞にノミネートされた作品でもあるが、主役の6歳の少女ムーニーを演じるブルックリン・キンバリー・プリンが、まるでドキュメンタリーを観ているかのように思える、大人を喰う演技をみせる。

ラストの描き方に好き嫌いが分かれているようだが、この解決を提示しないラストシーンの巧さには正直やられた。…ディズニーワールドを駆け抜けていく二人の子供達、その先に夢のお城がそびえ立っている。
その後の、女の子と母親が、どう生きていくのかをみせないだけに、もの悲しさと明るさが混ざった忘れられないラストシーンになっている。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ローズの秘密の頁』 鑑賞/雑感

2018年10月12日 08:25

「父の祈りを」や「ドリームハウ」のジム・シェリダン監督、主演はバネッサ・レッドグレーブで、その若かりし頃をルーニー・マーラが演じている、『ローズの秘密の頁』(原題:The Secret Scripture)。

これ、アイルランド人の監督が、アイルランドの作家セバスチャン・バリーの原作を映画化したもので、原作小説の題名は映画の原題と同じ The Secret Scripture(秘密の聖書)だが 、邦訳は出ていない。

主人公は赤ん坊殺しの罪で精神障害犯罪者として、40年もの間病院に収容されている老女で、その間、聖書の中に密かに日記を書きつづっていて、その40年前をルーニー・マーラが演じている。この老若を演じる二人の女優の演技がすばらしいのだが、特にバネッサ・レッドグレーブの凄さは特筆もの。

一人の女性が背負う事になる人生が、観ている側にも重く、この手の作品が苦手な方は多いと思うが、我慢して鑑賞ください、後半からラストにかけて、観て損のない展開がまっています。

妊娠し出産直後に、彼女が我が子を殺したと言う目撃者たち、「殺してはいない」と一貫して主張する主人公。真実は後半まで伏せられていて…。
まぁ、感のいい方は、早い段階でストーリーが読めてしまう展開ではあるので、ミステリー的な期待は無しでご覧ください。

『ローズの秘密の頁』日本語オフィシャルサイト

日本公開予定作品『スカイライン 奪還』『アンダー・ザ・シルバーレイク還』『ザ・アウトロー

2018年10月09日 08:28

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『スカイライン 奪還』(原題:Beyond Skyline)  10月13日(土) 丸の内TOEI他。
「スカイライン 征服」の続編だそうで、あの変なSF映画の続編が製作さていた事だけでも驚くが、さらに内容が、人類が征服されるがままだった前作から、人類が反撃に出て地球奪還を目指すというアクション満載の別物ストーリー。
前作よりも評判は良いらしく、VFXの出来も評価されている、しかし前作は何だったんでしょう。
『スカイライン 奪還』日本語オフィシャルサイト

『アンダー・ザ・シルバーレイク』(原題:Under the Silver Lake)  10月13日(土)新宿バルト9他。
「イット・フォローズ」のデビッド・ロバート・ミッチェル監督が、アンドリュー・ガーフィールドを主演に撮ったサスペンススリラー作品。
ロサンゼルスの街シルバーレイクを舞台に、隣に住む美女に恋をするオタク青年が、彼女が失踪する事で街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていく。
ヒッチコックとデビット・リンチが合体した"悪夢版ラ・ラ・ラ・ランド"って惹句が意味不明で観るしかないか。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』日本語オフィシャルサイト

『ザ・アウトロー』(原題:Den of Thieves)  10月20日(土)新宿バルト9他。
こちらもロサンゼルスが舞台だが、「エンド・オブ・ホワイトハウス」のジェラルド・バトラーが主演するアクションサスペンス作品。
カリフォルニア州一の確率で仕事を成功させてきた犯罪組織が、連邦準備銀行を襲うという計画をたて、これにロサンゼルス郡保安局の精鋭部隊たる重犯罪特捜班が立ち向かう。ジェラルド・バトラーは「エンド・オブ~」シリーズの3作目が制作中で、そちらの方が観たい。
『ザ・アウトロー』日本語オフィシャルサイト

DVD 『私が殺したリー・モーガン』 鑑賞/雑感

2018年10月05日 08:21

昨年末から今年初めにかけて一部ミニシアター系で公開されたドキュメンタリー作品、 『私が殺したリー・モーガン』(原題:I Called Him Morgan)。

まぁ、ジャズファンしか観ないと思われるマイナー作品で、しかも40年以上前の事件のドキュメンタリーって、誰が観るんだろう、と思いながら、ジャズファンの端くれとしては一応鑑賞。

リー・モーガンを知らなくても、彼が作曲した"ザ・サイドワインダー"を聴いた事がある人は多いと思う。この曲、当時ジャズロックと呼ばれ、ジャズファンの間で賛否両論が巻き起こった曲である(ちなみにこの映画の中では演奏されていない)。

初期の"アイ・リメンバー・クリフォード"が高評価で、1960年頃アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズに在籍、1972年にニューヨークのジャズクラブで演奏をしていたが、そのステージ休憩時間に、妻のヘレンに拳銃で撃たれ死亡している。

妻はなぜ彼を殺したのか、彼女が晩年に残した唯一のインタビューと、友人や関係者たちの証言、モーガン本人の演奏映像や肉声も加えて事件の真相に迫る内容で、監督はカスパー・コリン。
これ、時代的に昔の映像は殆どがモノクロのスチール写真で構成され、カラーのムービーになるのは、当時の関係者の現代でのインタビュー場面のみ。

映画としては極めて地味な作品ながら、これを飽きずに観られるのは、やはり当時を知るジャズファンだけであろう。…他の方にはお勧めしません。

『私が殺したリー・モーガン』日本語オフィシャルサイト

最近、過去の名作の再上映が幾つか、あるようで…。

2018年10月02日 08:11

今回は、その紹介。
『恐怖の報酬 オリジナル完全版』(原題:Sorcerer)  11月24日(土)シネマート新宿他。

1953年のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のフランス映画『恐怖の報酬』をウィリアム・フリードキンが1977年にリ・メークした作品。
クルーゾー版でイヴ・モンタンが演じた役をロイ・シャイダーが演じている、モノクロのクルーゾー版も素晴らしいが、カラーで展開するフリードキン版も負けず劣らずのサスペンス感があった記憶があり、しかも公開時にカットされた30分が追加された完全版との事で期待している、
フリードキンに関しては「エクソシスト」もTVドラマ版が最近、製作され、その才能を見直す動きがある。

『恐怖の報酬 オリジナル完全版』日本語オフィシャルサイト

『遊星からの物体X デジタル・リマスター版』(原題:Thing)  10月19日(金)丸の内ピカデりー他。
こちらもハワード・ホークスの「遊星よりの物体X」のリメイク作品で、ご存じジョン・カーペンター監督の代表作品と言っていいだろう。
36年目のデジタル・リマスター版で、もはやTV版が初見という方が多いが、一度、劇場スクリーンでご覧いただきたい傑作である。
なお、『ゼイリブ』もHDリマスター版が9月29日(土)から新宿シネマカリテにて特別レイトショー公開された、その後の他劇場公開は、こちらの日本語オフィシャルサイトで..。

『遊星からの物体X デジタル・リマスター版』日本語オフィシャルサイト

その他に、11月3日(土)からシネマート新宿で、ブライアン・デ・パルマの『ミッドナイトクロス』、マイケル・ウィナーの『スコルピオ』、アンドレイ・コンチャロフスキーの『暴走機関車』等が予定されている。
こちらのサイトの、下にお知らせあり

Artist Pickup アル・ウィリアムソン

2018年09月28日 08:25

アル・ウィリアムソン(Al Williamson) 1931年生まれで、2010年に亡くなったニューヨークのコミック・アーティスト。
ウィリアムソンが最も多く描いたコミック・キャラクターはフラッシュ・ゴードンで、10歳の頃。母親に連れられて観に行った映画「Flash Gordon」からのの影響が大きいと言う。
後に、ウォーレン社の"Creepy"や"Eerie"に作品を発表、その時知り合ったフランク・フラゼッタとの共同制作となる作品も発表している。

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コミックやイラストレーションアートの熱心なコレクターでもあるウィリアムソンは、その作品においても数々の賞を受賞し、コミック界において最も賞賛され、影響力のあるクリエイターの一人でもある。…1980年代以降、マーベルコミックスで、スーパーマン、デアデビル、スパイダーガール等の作品を完成にも加わり、数多くのアメコミ・アーティスト達に影響を与えている。
また、後年「スター・ウォーズ」のコミックを数多く手掛けてもいる。

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ERBzine Al Williamson - Flash Gordon
Al Williamson - Alchetron, The Free Social Encyclopedia

日本公開予定作品『イコライザー2』『ルイスと不思議の時計』『エンジェル、見えない恋人』

2018年09月25日 08:33

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『イコライザー2』(原題:The Equalizer 2)  10月6日(土)TOHOシネマズ日比谷他)。
主演がデンゼル・ワシントン、監督がアントワン・フークアで、前作「イコライザー」の続編。前作はクロエ・グレース・モレッツとの共演があったが、今回クロエ・グレースは出演がない。
デンゼル・ワシントン主演作で続編が作られるのは、初めてなんだそうだが、最近のこの手のシリーズでは、キアヌ・リーブスの「ジョン・ウィック」シリーズにヒーローの性格が似ている。
『イコライザー2』日本語オフィシャルサイト

『ルイスと不思議の時計』(原題:The House with a Clock in Its Walls)  10月12日(金)TOHOシネマズ日比谷他。
マーティン・スコセッシの「ヒューゴの不思議な発明」を思い起こさせる邦題だが、原作はブライアン・セルズニックではなく、こちらはジョン・ベレアーズの「壁のなかの時計」が原作。映画化に合わせ、映画と同名の邦訳も静山社から新書版が出た。
監督はなんとイーライ・ロス、ファンタジーも撮れるとは知らなかった。ジャック・ブラックやケイト・ブランシェットが出演している。
『ルイスと不思議の時計』日本語オフィシャルサイト

『エンジェル、見えない恋人』(原題:Mon ange)  10月13日(土)新宿武蔵野館他。
「神様メール」のジャコ・バン・ドルマルが製作し、俳優のハリー・クレフェンが監督したラブロマンス・ファンタジー。
ある閉ざされた施設の中で産まれた、姿の見えない特異体質の男の子と、盲目の少女の物語、世間との接触を絶ち、母は懸命に息子を育てるが、ある日、盲目の少女が声と匂いで彼の存在を知り、惹かれあうが、少女は目の手術を受けることになる。
『エンジェル、見えない恋人』日本語オフィシャルサイト

DVD 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』 鑑賞/雑感

2018年09月21日 00:06

先月観た「レディ・プレイヤー1」のスティーブン・スピルバーグ監督の、こちらは社会派ドラマで、時系列的には「レディ・プレイヤー1」の前の2017年の作品になる。
『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(原題:The Post)。

1971年、泥沼化したベトナム戦争で、反戦の声がアメリカ国民の間に高まっていた頃の実際の事件を、メリル・ストリープとトム・ハンクの初共演で製作された作品。
…国防省がベトナム戦争に関する経過や客観的な分析を記録し、トップシークレットとなっていた文書、通称“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在をNYタイムズがスクープする。

舞台となるワシントン・ポスト紙の社内から始まるのだろうな、と思っていたらベトナム戦争の戦場シーンから始まったので、「プライベート・ライアン」かよ、と思ったが。あちらは第二次世界大戦の時代の話だった。
ここで既に悪化している米軍の状況と、それを隠蔽する政府の態度が矢継ぎ早に描かれる。

この入り方から、スムースにワシントン・ポストとニューヨーク・タイムスのライバル関係の状態とかが判り、国防省の最高機密文書であるペンタゴン・ペーパーズの存在をNYタイムズがスクープし、それをニクソンが差し止め、ライバル紙のポストも掲載すれば政府に何をされるか解らないという状況になる。

結局、これはポスト紙の女性社主への賛歌なんだと判明する展開まで、実は地味目な題材を面白く観せてくれるし、当時の新聞の活字の扱いや、輪転機の描写が、いい味を出していて興味深く鑑賞できた。

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』日本語オフィシャルサイト

DVD 『トレイン・ミッション』 鑑賞/雑感

2018年09月18日 08:32

リーアム・ニーソン主演で監督がジャウム・コレット=セラというコンビの作品、「アンノウン」「フライト・ゲーム」「ラン・オールナイト」と今までタッグを組んできた作品の4作目にあたる。『トレイン・ミッション』(原題:The Commuter)。

この監督、アクション映画量産のB級ランク視されかねないんだが、「蝋人形の館」「エスター」のホラー系から、「ロスト・バケーション」のサメ映画、そしてリーアム・ニーソンを主演にした4作品まで、そこそこ面白いというか、観ていて飽きない作品を作り続けている監督で、職人芸を感じさせる監督でもある。

作品のタイプで言うと列車モノで、「フライト・ゲーム」の航空機モノと同じ類いの乗物系サスペンス・アクションで二番煎じの企画であり、列車を舞台にした映画は名作が多いので、難しいところだが、そこらあたりをひっくるめても、結構頑張ってる作品に仕上がっている。

原題が"The Commuter"で直訳すると通勤者、60歳過ぎてリストラされた保険セールスマンが失意で家路に着く際に事件が起きる。この主人公、元刑事という矢張りというか、お約束の設定。
…車内で見知らぬ女性から、電車が終点に到着するまでに、100人の乗客から1人のある人物を見つけ出せば、マイケルに多額の報酬を払うという、無理矢理な設定で始まるのもご愛敬。

見所はアクションシーンではなく、列車内の撮影シーンが非常に凝っていて、車内を移動するカメラの動きが面白く、楽しめる事。
まぁ、全体からしたら、ちと、中ダルミはするが、時間つぶしには最適の、そこそこお勧め作品。

『トレイン・ミッション』日本語オフィシャルサイト


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