DVD『ルーム』鑑賞/雑感

2016年09月29日 00:06

講談社文庫から上下巻で邦訳も出ているエマ・ドナヒューの「部屋」を、「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソンが監督し、「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが主演したヒューマン・ドラマ、『ルーム』(原題:Room)。

トロント国際映画祭で観客賞を受賞し、アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされ、ブリー・ラーソンが主演女優賞を獲得している。
…父親によって24年間、地下室に監禁された実際の事件から発想を得た原作を映画化した作品で、映画では、見知らぬ男に誘拐され、7年前から施錠された部屋に監禁されている主人公がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子に外の世界を教えるため、全てをかけて決死の脱出を試みる話になっている。

この監督の「FRANK フランク」は未見だが、巧い監督だと、これを観て認識した。誘拐・監禁で始じまる物語だが、ホラー的要素や目を背けるような場面は一切無い。…監禁されている場面は前半のみで、後半は脱出・救助の物語へとシフトする。

ヒューマン・ドラマではあるが、ミステリー的要素も多分にあり、男の子が警察に保護される迄の展開はサスペンスに富んでいる、この男の子が初めて世界と触れ合っていくシーンは、SFのファースト・コンタクトさえ想起させ、やがて家族の再生の物語へと変化する過程の運びが実に巧い。

ラストシーンが冒頭のシーンと被さる感動的ラストまで、一時も目を離せない傑作、お薦め。

『ルーム』日本語オフィシャルサイト

日本公開予定作品『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』『ジェーン』『奇蹟がくれた数式』

2016年09月27日 00:34

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『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』(原題:Pay the Ghost)  10月22日(土)渋谷シネパレス他。
原作がティム・レボンの同名小説だが邦訳は出ていない。監督は「ブルックリン最終出口」のウリ・エデル、主演がニコラス・ケイジというサスペンス・ホラー作品。
…ニコラス・ケイジ演じる主人公が息子を連れて、ハロウィンカーニバルに出かけるが、その息子が突如姿を消してしまう。彼は必死の捜索の末に毎年ハロウィンには多くの子供たちが失踪していることを突き止める。
『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』日本語オフィシャルサイト

『ジェーン』(原題:Jane Got a Gun)  10月22日(土)新宿ピカデリー他。
主演・製作がナタリー・ポートマンで、共演の敵役にユアン・マクレガーを配し、「ウォーリアー」のギャビン・オコナーが監督する西部劇。
アメリカ西部で夫や娘とともに暮らしていたジェーンだが、ある日、夫が撃たれ、逃げ帰って来た事からその平穏は奪われてしまう。相手は悪名高きビショップ一家。…瀕死の夫と愛する娘を守るため、南北戦争の英雄でかつての恋人に助けを求める。
『ジェーン』日本語オフィシャルサイト

『奇蹟がくれた数式』(原題:The Man Who Knew Infinity)  10月22日(土)角川シネマ有楽町他。
生まれも境遇も全く違う二人の天才が出会い、世界を変える奇蹟を起こした実話を基にした作品。
独学で数学を学んだインドの"アインシュタイン並みの天才"と言われるラマヌジャン役を「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル、英国人数学者のハーディ役を「リスボンに誘われて」のジェレミー・アイアンズが演じる。監督はマシュー・ブラウン。
原作はロバート・カニーゲルの「無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン」で、工作舎から邦訳も出ている。
『奇蹟がくれた数式』日本語オフィシャルサイト

DVD『リリーのすべて』鑑賞/雑感

2016年09月24日 00:35

監督は「英国王のスピーチ」のトム・フーパー、主演は「博士と彼女のセオリー」のエディ・レッドメイン、 助演がアリシア・ヴィキャンデルという実話を描いた伝記ドラマ、『リリーのすべて』(原題:The Danish Girl)。

肖像画家の妻に頼まれて女性モデルの代役を務めたその夫が、それをきっかけに自身の内側に潜む女性の存在を意識するようになる。…世界で初めて性別適合手術を受けた実在の男性の物語を、「博士と彼女のセオリー」でスティーブン・ホーキング博士を演じ、アカデミー主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが演じているのが見どころの作品。

原作はアメリカの作家デビッド・エバーショフの同名の小説(The Danish Girl/デンマークの女の子)で、講談社から「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」なる長い邦題になって日本語訳本も出ている。

今では珍しくない題材だが、これは90年前の話である。…渋々、モデルの代役を務める発端から、彼が描いた風景画の場所を妻が訪れるラストまで、1920年代のデンマークの風景とドラマが相まって、一つ一つのショットの美しさは特筆もの。
このような物語に偏見があるとしても、これは完成された映画として、究極のラブ・ストーリーとして観るべき作品だ。

…「博士と彼女のセオリー」でも、その演技力に圧倒されたが、今回のエディ・レッドメインは神がかっていた。
その"エディ・レッドメインへの『リリーのすべて』に関するインタビューが、下記の、YouTubeで公開されているので、御覧頂けば、と思う。
"エディ・レッドメイン突撃インタビュー!『リリーのすべて』"

『リリーのすべて』日本語オフィシャルサイト

Atist Pickup マッシミリアーノ・フレザット

2016年09月22日 00:08

Massimiliano Frezzato マッシミリアーノ・フレザット、1967年トリノ産まれ、現在49歳のイタリアのコミック・アーティスト。
日本での知名度は低いが、イタリアでは高い人気の作家で「Keepers of the Maser/メーザーの看守 」シリーズは フランス ベルギー 米国 ドイツ デンマークで翻訳されている。
メビウス 、 エンキ・ビラル 、宮崎駿、大友克洋等の影響を受けているらしい。…発表された作品も多いが、何せ、その多才な画力に圧倒される。

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イタリアの作家と言えば、アレッサンドロ・バルブッチセルジオ・トッピミロ・マナラ等を紹介してきたが、このマッシミリアーノ・フレザットも、日本でも、もっと知名度が上がってもいいアーティストである。

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Massimiliano Frezzato THE BLOGH、◎Massimiliano Frezzato FaceBook Page
Pinterestサイト Massimiliano Frezzato ページ、◎Comiclink Massimiliano Frezzato ページ

DVD『X-コンタクト』鑑賞/雑感

2016年09月20日 00:25

2014年6月だから2年前になるが、"もろ"物体X"な新作『ハービンジャー・ダウン"として紹介した作品が、昨年7月の新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2016/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」の上映作品として公開され、DVDが10月21日にリリースされる運びになった。…但し、発売前に既にオンデマンド及びレンタルが開始されている、邦題は『X-コンタクト』(原題:Harbinger Down)。

密室の船内で未知の液状生命体に襲われた人々の恐怖を描いたSFスリラーで、「エイリアン」シリーズのランス・ヘンリクセンを主役に迎え、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」などの特殊メイクを担当したアレックス・ギリスが監督・脚本を手がけた作品。
この監督、実は「遊星からの物体X」の前日譚として製作された「遊星からの物体X ファーストコンタクト」でも彼のグループがSFXを担当していて、そのCGを使わないプラクティカル・エフェクトを用いて、"物体X"の影響下で作られている作品となっている。

で、感想を言うと、…残念ながら、"物体X"の二作品に共通する、誰が本物の人間なのか、というサスペンス感が抜け落ちている為、設定を剽窃しただけの、気の抜けたB級SFにしかなっていなかった。

その意味では、設定を借りた前日譚の「‥ファーストコンタクト」は、82年版オリジナルとの整合性をきっちり描いていて、それなりの見どころがあったのだが、本作品はオリジナルの単なる劣化コピーでしかなかった・

最後に監督・脚本を手がけたアレックス・ギリス君、…敢えて上から目線で言わせてもらえば、その志と頑張りは評価するが、リスペクトする二作品には及ばない残念な作品だったね、また出直してくれるのを楽しみにしているよ、

『X-コンタクト』日本語予告編(YouTube)

DVD『ヴィクトリア』鑑賞/雑感

2016年09月17日 00:11

2015年製作のドイツ映画、我が国では本年5月にシネコン系で公開された作品、『ヴィクトリア』(原題:Victoria)。
ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞、ドイツ映画賞では作品賞含め6部門を受賞したクライム・サスペンス。

…舞台はベルリン、スペイン人の女の子ヴィクトリアが地下のクラブで踊り疲れ、帰路につこうとした夜明け前の路上で地元の若者4人組に声をかけられ、予測不可能な状況へと突き進んでいく2時間あまりの出来事を全編ワンカットで撮っている事が話題になった作品である。

物語と映画での時間経過が同じで、ストーリーの進行に併せて、自分が体験しているような気分になる妙な映画ではあるが、如何せん、致命的に面白くない。
手持ちカメラで何処までも付け回す、ドキュメンタリーで撮ったようなリアリティーさとか、技術的な凄さに、観客はすぐに飽きる。…でクライムアクションという事なんだが、物語の出来が悪く、これも見どころは皆無。

クラブから出て如何にも怪しい4人組と出会い、ノリで一緒に行動し、挙げ句の果てに銀行強盗に加担させられてしまう女性って無理がありすぎ、リアリティが無さすぎで、映像のリアリティさとは真逆。…他の登場人物も含めて、全員頭が悪いとしか思えない。

唯一、映画が面白くなるのは、非現実的な過程を経て強盗に至るシーンのみという、残念すぎる作品でした。

『ヴィクトリア』日本語オフィシャルサイト

DVD『ヘイトフル・エイト』鑑賞/雑感

2016年09月15日 00:26

クエンティン・タランティーノが「ジャンゴ 繋がれざる者」の後に撮った西部劇&ミステリー映画として、本年2月に劇場公開された作品、『ヘイトフル・エイト』(原題:The Hateful Eight)。、

出演はサミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ティム・ロス、チャニング・テイタム等で、音楽がエンニオ・モリコーネ、前作に続くタランティーノ調マカロニ・ウェスタンである。
密室ミステリーとして宣伝されているが、そんな要素はない。
確かに雪で閉ざされたロッジで、次々と起こる殺人事件と、その真相を追いかけて、意外な事実が明らになってはいくが、通常のミステリー映画を期待すると唖然とします。

…舞台は南北戦争後のワイオミング。賞金稼ぎの黒人サミュエル・L・ジャクソンが、女犯罪者を連れて町へと向かっていた同稼業のカート・ラッセルと出会い、馬車に同乗するところから始まるのだが、この馬車が舞台となるロッジに到着するまでが少々長い。
まぁ、人物紹介の意味もあり、ストーリーの伏線部分もあるのだが、タランティーノ映画のファンでないと、ここで既に退屈かも知れない。

なにしろ、タランティーノ映画を観てきた人間にとっても、物語の半分は冗長に感じられてしまうのだが、後半部分に至ってようやく、タランティーノらしい暴力的且つスラップスティックな映像が爆発する(…吹き飛ばされる頭部の描写も含めて、ラストの血みどろ感は半端ない)。

作品の雰囲気は「レザボアドッグス」に近いんだが、タランティーノ作品中では微妙な位置の映画であった。

『ヘイトフル・エイト』日本語オフィシャルサイト

日本公開予定作品『人間の値打ち』『われらが背きし者』『スター・トレック BEYOND』

2016年09月13日 00:25

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『人間の値打ち』(原題:Il capitale umano)  10月8日(土)Bunkamura ル・シネマ他。
イタリアのパオロ・ビルツィ監督作品で、イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を7部門で受賞している。
ひき逃げ事故をめぐって交錯する3組の家族の人間模様を描いたサスペンス・ドラマ。
昨年の4~5月に東京有楽町朝日ホールで行われた"イタリア映画祭2015"で上映された作品。
『人間の値打ち』日本語オフィシャルサイト

『われらが背きし者』(原題:Our Kind of Traitor)  10月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ他。
岩波書店から邦訳も出ているジョン・ル・カレの同名スパイ小説の映画化。監督はスザンナ・ホワイト、主演はユアン・マクレガー、共演にステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリス等。
イギリス人大学教授と妻が、モロッコで休暇中に偶然知り合った男からUSBをMI6(イギリス秘密情報部)に渡してほしいと頼まれた事から、世界を股にかけた危険な亡命劇に巻き込まれていく。
『われらが背きし者』日本語オフィシャルサイト

『スター・トレック BEYOND』(原題:Star Trek Beyond)  10月21日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズ他。
J・J・エイブラムス監督の"新スター・トレック"シリーズの3作目。但しエイブラムスは製作に廻り「ワイルド・スピード」のジャスティン・リーが監督に抜擢された。キャストはシリーズ続投のクリス・パイン、ザカリー・クイント、サイモン・ペッグ、カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ等の面々。
今年6月に事故で亡くなったロシア人操縦士チェコフ役のアントン・イェルチンも出演、これが遺作となった。
『スター・トレック BEYOND』日本語オフィシャルサイト
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異類婚姻譚の物語・映画作品

2016年09月10日 00:01

前回の『 DERAGON ドラゴン 』が、異類婚姻譚だと書いたが、振り返ってみると、この手の話をいくつか過去に紹介している(…こういう話が好きなのかも知れないなぁ)。 異類婚姻譚って何だ?って方は、ウィキペディアのこちらを参照願いたい。日本を始め各国の例が網羅されている。

で、過去に紹介した作品がこちら。…各作品の詳細と感想はリンクから参照願いたい。
『テール しっぽのある美女』(画像:左)   ◎『オンディーヌ 海辺の恋人』(画像:中)   。◎『スプラッシュ』(画像:右)

iruikonin

まぁ、この中でお勧め出来るのは『スプラッシュ』だけだが、30数年前の作品なので、そのつもりでどうぞ。この『スプラッシュ』、今年になってリメイク企画が浮上していて、チャニング・テイタムが男性版人魚を演じるとか(‥観たくない)。

日本のコミック界を探せば、この手の異類婚姻譚は数多いそうだが、生憎、その方面は疎いのでカット。
小説では芥川賞を受賞した本谷有希子のズバリ「異類婚姻譚」という短編集があるが、作品の方向性が当方の思惑と違っていた。
…ここは矢張り小松左京の「女狐」を紹介して締める。

陰陽師、安倍晴明は稲荷の狐が化身した女性と人間の男性との間に生まれた子であるという、人形浄瑠璃や歌舞伎で有名な"葛の葉伝説"を元にしたSF短編小説で、この作品、後に小松左京賞受賞の高橋桐矢が「安部清明 天人相関の巻」として長編化している。

母、葛の葉が清明に宛てて残した一首がこれ、‥‥恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉。

DVD『 DERAGON ドラゴン 』鑑賞/雑感

2016年09月08日 00:01

「ウォンテッド 」や「リンカーン/秘密の書」を撮り、最近では、来年日本公開が予定されている「ベン・ハー」の監督でもあるティムール・ベクマンベトフが製作にあたり、ハリウッドとロシアのVFXチームが集結したというファンタジー作品。…我が国では劇場公開されずに、DVDのダイレクトリリースとなった、『 DERAGON ドラゴン 』(原題:On-drakon)。

人身御供というのは全世界共通の伝承で、その殆どが怪物の生け贄として乙女(処女)を差し出して、その怒りや災いを鎮めるという習わしで、…本作は昔のロシアの風習を元にドラゴンの生贄に差し出される少女が主人公。

…とは言ってもそれは昔の風習で今は結婚式の儀式に姿を変えていて、生贄の伝説は忘れ去られていたが、公爵の娘が嫁ぐ日に本物のドラゴンが現れ、少女を連れ去ってしまう。…絶海の孤島の洞窟で目覚めた少女の前に現れたのは半裸の青年で、彼はドラゴンの化身だった。

映画はここから、有らぬ(?)方向に曲がり出す、怪物退治のアクションを期待しているとポカーンとなる展開で、オタク女子向けラノベか、はたまた「青い珊瑚礁」か、少女と青年のラブラブな展開に‥。

人身御供の伝承を換骨奪胎、物語は異類婚姻譚にまで行き着く、いやはやこんな話とは思わなかっただけに、見終わって唖然。まぁ、ドラゴンの島の造形も含めて、VFXは、そこそこ見応えあり、悪くない出来なので、良しとするが……、ドラゴンの首って、フロイト的には、あれなので、そこに跨がる少女が妙にエロく見えたのは私だけ?。

『 DERAGON ドラゴン配給会社サイト
『 DERAGON ドラゴン予告編(YouTube/原語版)
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